福井人 no.28
久保 剛
「仕事がなくて、ふてくされて大の字になって作業場で寝たこともあるんですよ」と久保指物(さしもの)店三代目の久保剛(たけし)さん。和室が減ってしまった昨今、建具や家具を作る仕事が激減した。何か資格をと、一念発起で必死に勉強をして二級建築士の資格を獲得。頭に描いたものを図面で表現できるようになってから、自分の中で何かが変わった。しかし、木製の子ども椅子や眼鏡フレームを作ってみるも売れない。全国のクラフト展に出店するようになって、出展用テントの大敵の“風”を使って何かできないかと思いついたのが木製の「福来るクルクル風車」だ。今までと違うのは、勝山の“寅さん”さながら売り文句を工夫してみたこと。「重ね重ねの福が来るように羽根が2枚〜。鬼が外に福が家に帰るように羽根が逆回転する風車〜」。テンポのよい口上を聞いていると、福が本当に舞い込むように思えてくるから不思議だ。縁起のいい風車は行く先々で大好評。「“一番まわるのあんたの口やな”って言われますけどね(笑)」。