「農す神戸」
里山+都市。神戸市北区のちょうどいい暮らし

農す神戸 no.4

仕事も家事も育児も、みんな超多忙 だけど、日常が自然と共にある

会社員 / 大橋 祐一さん / 46歳 / 山田町

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平日はまちで働き、休日は農作業やDIYなど…メリハリの利いた暮らしを体現している大橋さん一家。自然が身近にありながら、神戸の中心部まで車で約15分で行けるアクセスの良さが、共働きの日々を支えている。
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住まいは、出会い。今しかできないことを

 

以前は、神戸市東灘区の山の手に住んでいた。「定年を迎えたら田舎暮らしを」と思い描いていたところ、「若くて元気なうちに、やっとかないといけないことがあるの」と人生の先輩から背中を押され、いま実現しなければと考えるように。「娘が小学校へ上がる前に」と移住先を探し始め、「ログハウスに住んでみたかった」という祐一さんは、フィンランド製のログハウスの建築を決意。「山田町にある青葉台は昭和50年代に開かれた住宅地で、価格が手ごろでした。家って、出会いですよね」と語る祐一さん。12月に着工して翌年3月に完成、引っ越したのは小学校の入学式の1週間前だった。

 
 

手間ひまかけて、家を育て、慈しむ

 

六甲山の南側より3~5℃は気温が低い北区にあって、「薪ストーブを使いたいから、寒い方がいい」と笑う一家のお気に入りはリビングルーム。ログハウスは壁が厚く、一度あたたまるとずっとあたたかいのが特徴で、気が付くと家族全員がリビングに集結している。
住み始めて3年がすぎた頃、足場だけ組んでもらって、自力で外壁を塗装しようと決めた祐一さん。妻の華子さんは娘さんと共に壁の低い部分をペイント、約2ヵ月かけて家族で成し遂げた。無垢材の家は一般的な住宅に比べて、どうしても手間ひまがかかる。塗装だけでも数年ごとに行う必要があるものの、DIYを趣味とする祐一さんにとっては面倒も楽しみのひとつ。みんなで取り組むことにより、一家の成長の軌跡が少しずつ塗り重ねられていくことにもなるように見える。

 
 

目の回るような日常を、豊かな緑が包む

 

平日は大忙しの大橋夫妻。祐一さんの通勤時間は、バスを乗り継いで約45分。デスクワークに追われ、オフィスに閉じこもることも多い。華子さんの通勤時間は約30分。製薬会社で臨床開発を担当、週の半分はあちこちの病院へ出張しており、新幹線の新神戸駅まで車で10分で行けるのは非常に便利だ。
そんな、てんてこ舞いの日々を支えるのが、自然の存在。「週末は仕事をわすれて、スイッチをオフに。庭の植物、周囲の環境すべてが四季の移ろいを感じさせてくれます」「裏山は、多種多様な広葉樹や松がしげる森。六甲山系でよく見られるコバノミツバツツジや椿が咲く春先は、特に美しいですよ」と魅力を語る夫妻。近所の川ではホタルが舞う他、キジやタヌキがごく普通に生息している。

 
 

150829大橋さんファミリー0164自宅_ログハウス

住宅街に映える赤、ログハウスは大橋家の夢のシンボル。

 
150829大橋さんファミリー0211_ベジタブルガーデニング収穫

この日収穫した野菜、今年は巨峰が見事に実った。

 
 

黒豆が育つシーズンは、家族で農作業

 

夏休み最後の土曜日、午前8時。丹波黒豆大豆の畑で草取りが始まった。淡河町にある貸し農園へ大橋さん一家が通い始めたのは4年前。「ここのオーナー制度を利用していた会社の同僚から、参加してみない?と誘われて。家庭菜園に加え、日常的に植物に触れていたいという願いが叶いました」とほほえむ華子さん。「農家の方が色々教えてくださる上、肥料や水やりをしたりと世話をしてくださるのでありがたいです」と言葉を続ける。
今では1区画40株を2区画分、借りている。咲き始めた可憐な花に触れないよう、夫妻は慎重に作業を進行。生き物が大好きな娘さんは前日の雨でぬかるんだ畑を裸足で駆けめぐり、カエルや虫をつかまえるたびに、ほらっ、と披露してくれた。

 

150829大橋さんファミリー0049貸し農園_黒大豆畑で作業

貸し農園、丹波黒大豆の畑で草を引く。

 
150829大橋さんファミリー0002貸し農園_黒大豆畑へ向かう

黒豆の成長を楽しみに、貸し農園に向かう道。

 
150829大橋さんファミリー0251自宅_ガレージアトリエ

ガレージ工房での大工仕事、祐一さんの至福のひととき。

 
 

尽きない夢を、どんどん叶えていく舞台

 

庭には、冬を4回越せる薪を蓄えた小屋がある。薪を割ったり、小屋やベンチを作るなど、DIYを楽しむ祐一さんは「男のロマン」であるガレージ工房で過ごすのが楽しみ。華子さんが丹精込めて育てている菜園では、20種類以上の季節の野菜やハーブが風に揺れる。
祐一さんの次なる夢は、キャンピングカーで全国の名所をめぐること。華子さんは野菜の自給自足が目標で「収穫した野菜を外で洗えるよう、炊事場を作ってほしい」と言い、裏庭にある小屋で遊びたい娘さんは、階段の設置を切望中。大橋さん一家のすこやかな野望はこれからも、きっと尽きることがない。

 
 

 

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書籍版『農す神戸』では、他にもこんな記事をお読みいただけます。
 ● ベーグルショップ 村上敦隆さん
 「パンが焼けて、家族と一緒に過ごせる 私たちにとってこれ以上ない幸せなんです」
 ● 建築士 村上隆行さん
 「小学校と地域の支えがあるから 子どもの個性を生かした子育てができる」 他

大橋さん一家のこれまで

 

祐一さんは滋賀県
華子さんは福岡県出身
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夫婦それぞれ神戸で過ごし
結婚
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東京勤務のため、横浜へ 
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転勤で、神戸へ戻る
東灘区住吉山手で3 年半
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北区へ移り住む
妻と娘の3 人暮らし
北区歴4 年