三陸人 no.62
齋藤 克之・ちか子
亀の湯は明治から続く老舗の銭湯だ。魚市場が南町にあった昭和31年頃までは、カツオやサンマ漁船が漁から戻ってくると、船員たちは亀の湯で一風呂浴びてから花街に行く、というのが定番コースだった。「50〜60人の船員さんが一気にくるから、女風呂はおしまいにして両方開放してね」と四代目の齋藤克之さん。今回の震災で2階まで浸水し、ボイラーが使い物にならなくなった。そんな時、大阪池田市から期間限定で仮設風呂キットが市に贈られることに。設置場所として亀の湯にスポットがあたり、2011年9月〜12月の期間内に約4000人が訪れた。「風呂ってこんなにも人を幸せにするのか、って思ったよ。船員以外に避難所の人たちやボランティアの人が来て、みんなすごく喜んで」。齋藤さんは再建を決心し、翌年7月にオープン。客は船員やボランティアが中心だが、「大きい風呂がいい」と仮設住宅から通う人もいる。かさあげ地区に指定され問題が山積みだが、「今できることをやるだけ」と笑う。