三陸人 no.20
ノリシゲ
さぁ、歩きましょう、歩きましょう。涙流れても。さぁ、築きましょう、築きましょう。愛するこの町を──。震災直後、東京から駆けつけ、ふるさとである大槌町吉里吉里の惨状を見て、この地に残ることを決心したというミュージシャンのノリシゲさん。冒頭の詩は瓦礫の撤去作業をしながら、拾ったギターでつくった曲「歩きましょう」の一部分だ。何もなくなってしまった町を見て、人が集まり本音で話せる場所が必要だと思った。兄とシンガーである妻とで廃材を集めて、全壊した実家の跡地にカフェ&バーApeを建てた。「大槌の人はもっと外に向ける楽しみがあってもいい」。ここから文化を発信したいと、ライブ公演やペーパークラフトのワークショップを開き、シーカヤックのツアーも始めた。「ここで育ったのに知らなかった。海が信じられないぐらいきれいだってことを」。2014年春に道路建設のために立ち退きが決まっている。けれどもきっと、この町に新たな拠点を見つけるはずだ。