三陸人 no.77
亀山 貴一
牡鹿半島の小さな入り江、蛤浜(はまぐりはま)。この浜から高台へあがっていくと、「cafe はまぐり堂」はある。古民家を改造した店内からは美しい海が眺められ、ちゃぶ台などが置かれた空間は和める雰囲気だ。この家で育ち、結婚してからは妻の美香さんと2人で住んでいた亀山貴一さん。震災で蛤浜は被災し、9世帯から3世帯へと減少。市内の実家にいた美香さんは帰らぬ人となった。「自分も妻も大好きだったこの場所が、このまま消滅するのは絶対に避けたかった」。ボランティアと力を合わせ、がれきの撤去や家の改修を行った。浜の再生に打ち込むため、水産高校の教員を退職。そして念願のカフェを完成させた。「自分の考えに賛同してくれた、ボランティアの方たちの協力があって実現しました」。メニューもボランティアと考えた。オープン以来、多いときは週末100人以上の客が訪れるという。「ほかの浜とも連携して一緒に元気になっていきたい」。2014年の夏までにゲストハウスとキャンプ場がオープンと、浜の再生は急ピッチで進んでいる。