「三陸人」
三陸地方の人々に出会う旅

三陸人 no.74

父の遺志を継いで、日本一の硯 雄勝硯を後世に伝える

遠藤 弘行

130930y_08 のコピー

右は石の色を生かして椿を彫った。左は模様部分に地元のアワビの殻を使っている

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トタンなどで作った、仮設の硯工房


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伊達政宗公も幕府に献上したという雄勝町(おがつちょう)の硯(すずり)。山から採掘される黒い硬質粘板岩が硯に適すとされ、小学校で使う硯の9割が雄勝のものだったという。遠藤弘行さんの実家は代々、原料となる玄昌石(げんしょうせき)の採石業。父の盛行さんは独学で硯づくりを始め、硬くて敬遠されていた白石やネズミ石の方が硯に適していることに気がついた。父が作った硯の美しさに心動かされ、弘行さんは弟子入りを決心。硯の良さは実際に墨をすってみてわかる。著名な書家は盛行さんの硯を「日本一の硯」と称した。その後、亡き父の精神を引き継いで製作に励んでいた弘行さんだったが、津波が工房や自宅、500点もの硯やノミなどの道具すべてをのみこんだ。「続けることは無理だと思ったけど、引退した硯職人が道具を託してくれ、流された材料の石も見つかった。これは親父からのメッセージなのかもってね」と遠藤さん。現在、現役の硯職人は2人。伝統産業の振興が町の再生につながると、後継者育成プロジェクトが進行中だ。

エンドーすずり館

住所:宮城県石巻市雄勝町船戸神明68
電話:080-1823-5433
営業時間:9:00〜16:00
料金:硯 ¥1,000〜
定休日:不定休
アクセス:石巻駅から車で1時間30分