三陸人 no.70
岩渕 成紀
“ふゆみずたんぼ”とは冬の間も田んぼに水を張り、田んぼに生きる多様な生き物の力を借りて、無農薬、無化学肥料で米作りを行う農法だ。実は日本では江戸中期から行われていたという。「田んぼに除草剤を使わなければ、藻や水草が生え光合成をする。微生物が繁殖してイトミミズが活動し、それを狙って水鳥も多く訪れる。生物多様性が守られるんです」とNPO田んぼの理事長の岩渕成紀(しげき)さん。ふゆみずたんぼを普及させる活動のほか、震災で塩害を受けた田んぼの復旧も行う。毎日、震災後の自然の回復力に驚かされるという。「世界4大文明も洪水で土地が肥沃になった。津波も同様。いくつかの場所で土の成分が豊かになったという報告も受けている。悪いことばかりじゃない」。三陸は10km以内に山、森、海があり、循環し合い、恵みの多い豊かな土地。「この宝を次世代に残していかないと」。毎年、田植え前には子どもたちがどろんこになって田んぼの代掻き(しろかき)や生きもの調査をするのがお決まりだ。