書籍版「銚子人」、好評発売中!

community travel guide 待望の第五弾! 〜銚子人みんなでつくった、千葉県銚子市の人々との出会いを楽しむ旅のガイドブック〜

関東最東端にある千葉県銚子市は、日本で一番早く初日の出を見ることができる町です。『海士人』『福井人』『三陸人』『大野人』に続く、第5 弾となる本書は「千葉県銚子市」の魅力的な人々が主役となった旅のガイドブック。今回のガイドブックでは、銚子出身の若者4人を中心とした制作委員会のメンバーと銚子市民が企画・取材・記事化・コンテンツ制作まで行いました。地元目線で編集された情報が、ぎゅっとつまった特別な一冊に仕上がりました。

 

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アーティストの感性で心豊かになるホテルを夢見る

宮内博史さんは1986年生まれ。画家で、かもめホテルの若き経営者だ。大学で美術を専攻後、家業であるホテル経営を立て直すべく2010年から跡を継ぎ、建築業の経験を生かしてホテルを改装。シンプルな内装に絵を飾り、快適なフランスベッドに替え、Wi-Fi 完備と、皆が楽しめるホテルに生まれ変わった。今後もじわじわとアートの要素を取り入れ、 心が豊かになるホテルを夢見ている。また、縁あって鳥取にもアーティスト活動の拠点を置き、銚子と行ったりきたり。「画家としてどこまでできるか試したい」と決意は固く、挑戦は始まったばかりだ。

銚子電鉄への愛ゆえに 知名度UPに奮闘する鉄道員

幼稚園の頃から夢は電車の運転士だった鈴木一成さん。出身は山形県。「銚電では昭和初期頃の車両が使われていて、レトロな感じにグッときたんです」。専門学校生時代に本社に出向き直談判。何度も足を運び、その熱意から試験を受ける機会を得、入社を許可されることに。会社が生産・販売するぬれ煎餅の配達から始まり、免許も取得して、念願の運転士にもなった。現在は総務課に身を置きながら、運転、宿直、撮影立ち会い、企画などなんでもこなす。鈴木さんを突き動かすのは銚電への深い愛。全国の人たちに訪れて欲しいと新たな企画を考える毎日だ。

醤(ひしお)と防災について熱く語る 銚子の物知り博士

「醤」専門店である、1630年創業の山十商店。醤とは大豆と大麦の麹を熟成させてできる発酵調味料。醤油のうま味が凝縮された深い味わいは、マグロやカツオの刺身や生野菜につけて食べるとまた格別だ。市内では醤を使った料理を食べられる店もある。「醤は『万葉集』にも登場する。醤油の原点という説もあります」と店主の室井房治さん。銚子の歴史に造詣が深く、研究熱心で、まさに生き字引。千葉科学大学危機管理学部の非常勤講師でもあり、防災に関わる指導を行っている。「醤も災害も自然から生まれる。災いも享受して初めて自然と共存できるのです」。

世界の人たちをハッピーにする国内で唯一の手作り風船の工場

ここは国内で唯一の、全工程手作りの風船工場。工場にはガラスの型がいくつも並び、その型を液体状にしたゴムに浸して乾かせば、風船のできあがりだ。天然ゴムを使っており、飛んでいった風船が落ちても自然に還る。40年以上も風船づくりに関わってきた伊藤房男さんは、「できない 」と言わないのがモットーで、ロンドンのアートスクールの生徒からの「3つ空気穴のある風船を作ってほしい」というリクエストにも応える 。テレビの企画で10メートル級の怪獣バルーンを作ったこともある。イベントに呼ばれ ればピエロに扮して風船で何でも形にし、まるで魔法使いのようだ。最近、障害がある人たちでも参加できる、「ふうせんバレーボール大会」の公式ボールを手がけることになった。「みんな一生懸命、風船を追いかけていたわねー」と奥さんの陽子さん。自分たちが作った風船が、多くの人たちを笑顔にするのが何よりもうれしいと話す。風船づくり体験を口実に、こんな素敵な夫妻に会いに出かけたい。

イルカの群れと出会う感動を 多くの人に届けたい!

銚子の海でイルカが見られるのはご存知だろうか ? 確認されているだけでも23種類、時期と種類によって推定2000〜5000頭がウォッチングで確認できるという。餌となるイワシや小サバが潤沢にいるためだ。イルカ・クジラウォッチングツアーを主催する、 銚子海洋研究所の宮内幸雄さんは、そんなイルカに魅せられた1人。26年前、水族館のイルカの飼育員だった宮内さんが、漁師に誘われて船に乗ったところ、800頭もの野生のイルカの群れに遭遇した。「いやぁ、ショックだった。180度人生が変わった。 自由に飛び回るイルカたちを見て、イルカを調教している自分をなんておこがましいんだって恥じた」。その時の感動を伝えたくて、水族館でイルカウォッチングツアーを企画した後、1998年に独立。2002年には資金を借り入れて専用の船を建造した。「銚子は一年を通してイルカに会える。クジラやシャチ、 オットセイも見ることができる。そんなところ、日本中探してもない」。イルカを“同志”と呼ぶ宮内さんと、イルカたちに会いに行きたい !

ボリューム 満点のベーグルサンドで 銚子人を笑顔で迎える

商店街にある小さなカフェ。ここの名物は「アボカドチキン」や「じゃがいものオムレツ」などを挟んだボリュームたっぷりのベーグルサンド。「オリジナルカフェラテプリン」「クロッチョパフェ」などのスイーツも充実とあって、いつもお客さんで大賑わいだ。店主の飯森由美さん(右)は元看護師。2003年にオープンした当初は、オーナーである夫と共になかなか仕事に慣れなかったという。「毎日、憔悴しきって “もうやめたい” と何度も思いました。でもお客さんに励まされて、“ 頑張らなきゃ”って続けてこられました」。新商品1つ出すにしても夫と何十回も試作を繰り返し、納得のいく商品でなければ店に並べない。「せっかく食べていただくのだったらおいしいものを食べて欲しいじゃないですか」。 その言葉どおり、どれも抜群のおいしさだ。それに飯森さんとスタッフの堀井聖子さん(左)の笑顔が加われば、毎日満席なのは納得。ラテアートをほどこした、自慢のカフェラテもぜひ試してみたい。

“銚子つりきんめ”のブランドを守り次世代に継承する

千葉ブランドの魚といえば、金目鯛。「銚子つりきんめ」は銚子沖で立て縄と呼ばれる一本釣り漁法により、一尾ずつ丁寧に釣り上げられた金目鯛だ。外川キンメ船団は銚子の金目鯛の価値を高めるために1995年に結成。つい最近まで、メンバーである漁師自ら、東京都内の催事場や千葉駅前、「海ほたる」に出向き、金目鯛のPRを行っていたという。そのかいあってか、毎年開催される「きんめだいまつり」の集客数は年々増加。「次世代に資源を残すために乱獲はしない」と団長の田辺克己さん(前列左から2番目)。資源保護のために、「網を使わず釣り針で釣る」、「釣糸が1人2本、釣針は120個」、「漁場の一部を1〜5月は禁漁」、「日祝は周年禁漁」、「25センチ以下の小型魚は再放流する」といった取り決めを実施している。「もっと気軽に金目鯛を食べてもらいたい。近い将来、銚子市内に漁師のおかみさんたちが金目鯛料理をふるまう“かあちゃん食堂”をオープンしようと考えています」。今から楽しみだ。