ご当地カクテルと福井の穴場情報をふるまうバーテンダー

肺がんという大病を経験したからなのか。はにかみつつも、達観したもの言いが個性的なCHARMY BARの佐々木将文さん(左)。「隠れ家としての福井の魅力をたくさん知っている」とのこと。お客さんと釣りツアーも構想中、大の釣り好きなConcent Bar 2ndの佐々木順一さん(右)は「県外の人と話すのは、その人の住む土地の魅力を聞けるし、逆に福井の魅力も伝えられるから嬉しい」と語る。2人からは競合ではなく共に蔵の辻を発展させたいという想いが感じられる。そんな2人を含む仲間でご当地カクテルも開発した。旅のはじめの情報収集とともにいかがだろうか。

40種類のお惣菜が食べ放題 おふくろの味を食卓に

40種類ものお惣菜が並ぶランチバイキングが大人気のじんべえ。毎日県内外から客が訪れ、表に行列ができるほどだ。その人気は、現役のお母さんたちが作る、さば味噌や昆布巻き、大学いもなど昔懐かしいおふくろの味。「織田家ゆかりの剣(つるぎ)神社の真ん前だしね。観光客や地元の人たちの交流の場にもなっていますよ」と店長の林多恵子さん。インターネットを駆使して、毎日メニューや日常のつれづれをブログやツイッターに書き込む、元気なお母さんだ。「遠くから食べに来てくれるのがうれしい。この間は東京からも来ていただきましたよ」と林さん。惣菜はお持ち帰りも可だ。

夫婦二人三脚でお客さんをいやす

にこにこと出迎えてくれる2人の佇(たたず)まいに、どこかほっとした気持ちになる。地に足をつけて生きてきた人だけが醸し出せる温かさがにじみ出ているせいだろう。お父さんの利春さんはそば打ちの名人。食事には必ず手打ちのそばがつき、これが何杯でもいける。お母さんの美智子さんは一見のんびりとしているが、実は新しいもの好きの行動派。2005年に築150年余の古民家で農家民泊を始めた。昔風の居間で一緒にちゃぶ台を囲むと、まるでおばあちゃんちに里帰りした懐かしさ。夜の「一杯お付き合い」にはお父さんの笑顔が1割増になること間違いなし。

可憐でたくましい乙女3人組

冬の間、越前海岸の斜面一帯は水仙の花で埋め尽くされる。毎年この景観をアピールする大役を担うのが、水仙娘だ。今年は中橋暁子さん(左)、小川知恵さん(中央)、小林愛さん(右)の3人が選ばれた。かすりの着物姿がなんとも初々しい。厳しい冬の海風に向かって咲く越前水仙。この花の発祥には、こんな言い伝えがあるという。かつて美しい娘が自分をめぐって争う兄弟を嘆き海に身を投げた。この娘が花に姿を変えたのが越前水仙の始まりなのだとか。この伝説さながらに愛らしくもたくましい乙女3人組。彼女たちに会いに、越前に足を運んでみていはいかがだろう。

山奥の地元からロングライフ デザインを提案する

遠く山の裾野まで一面に広がる田畑。一見ここ?と思う場所に、モダンな建物のインテリア雑貨店「GENOME(ゲノム)」はある。場所や時代に左右されないロングライフデザインのモノを提案する場として、「このなんもない地元」をあえて選んだという藤原ヨシオさん。17年勤めた役場を辞めてこの店をオープン。不安もあったがデザイナーなど感度の高い人々の間で人気となり、先日開催したフリーマーケットは常時50台の車が並ぶほど盛況だった。「この店が地元の若い人たちの自慢になったら嬉しい」。訥々(とつとつ)と語る表情に、照れと誇らしさが見え隠れした。

一見やんちゃでも、滑りはプロ級

山間にボードを滑る音がこだまする。テニスコートを改造して造った「桜橋スケートパーク」を運営するスケボー集団KON.だ。代表の上杉さん(1段目右から3番目)は全日本23位に入るほどの上級者。スポンサーをつけ、他県からチームを招いて大会を行うなど精力的に活動している。メンバーはそれぞれ漁師、製造業、設計士と本業をもつが、「ドラゴン」「マーくん」とお茶目な愛称で呼び合う仲の良さ。誰かが高度な技に成功すると一斉に場内が沸く。「ここは俺たちのホーム。知らない人が来ても、皆仲間みたいなものです」。プロを目指して、9名は今日も滑る。

郷土料理を伝える 海の宿の女将

「また来るね!」そうお客さんに言ってもらうのが何より嬉しいと話すのは「うみの宿さへい」の女将、南清美さん。よく笑いよくしゃべる、太陽のような人だ。農家から漁師に嫁ぎ、宿の女将に。子育てが一段落した今、南越前の郷土料理の継承と発信に取り組んでいる。「自分もまだ勉強中」と年配者に教えを乞い、若い人に伝える。最近では押し寿司「へしこ」をつくる教室を開き、鯖の開き方から教えるなど積極的に活動している。「魚介の豊富なこの地域の郷土料理はとにかく美味しいんです。だからもっと沢山の人に食べてもらいたい」。「さへい」は、波しぶきがかかってしまうのではと思うほど、海のすぐ傍にある。「どんな嫌なことがあっても、海を見ていると忘れられる」と清美さん。若い人からお年寄りまでが集う「サロン」を、古民家につくりたいという夢もある。エサを撒(ま)いては寄ってくる沢山のカモメにはしゃぐ姿が少女のよう。その人なつこさで、今日もにこにことお客さんを迎える。