個性豊かな越前和紙を提案する 和紙ソムリエ

「もともとここは、武家の公文書紙専用の産地だったんです」。そう教えてくれたのは、代々この地で和紙問屋を営む杉原商店の十代目、吉直さん。幕府向けの高級紙を専門につくってきたため、産地名は広く知られていないが、今や「どんな紙でもつくれる」のがここ越前市。色紙、透かし、大紙と特技の異なる400名近い職人が揃う。自ら切り拓いた建築・インテリア向けの紙も注目され、パリのホテルやショーウィンドウを飾る。てきぱきと話すプロデューサータイプだが、本人いわく「自分は御用聞き」。客の要望に応じてさまざまな職人を思い浮かべ、国内外を今日も走る。

紙漉きの原点を守り続ける 人間国宝

和紙の原点ともいえる楮(こうぞ)100%の紙を漉(す)き続けて60年。九代目、岩野市兵衛さんの毎日は、今なお紙漉きとともにある。「市兵衛さんの紙じゃないと」という客は後を絶たないが、本人は「ただ手漉きの基本をやってきただけ」と至って謙虚。2000年に人間国宝の指定を受けるも、里では変わらず親しみを込めて「いちべえさん」と呼ばれる愛嬌あるご老人。紙の原料である楮は、煮る、叩く、チリを取るなど下処理の仕事が多い。その大変さははかり知れないが、淀みなく動くその手つきはあまりに自然で、紙漉きはもはや市兵衛さんの体の一部のよう。その姿は尊い。

世界中の料理にしっくり合う 日本酒“梵”のおいしさを世界に

年間40回以上も海外出張に出かけるという日本酒醸造元・加藤団秀(あつひで)吉平商店の十一代目・加藤さん。日本酒「梵(ぼん)」は1998年にカナダの国際酒祭でのグランプリを皮切りに、毎年さまざまな酒コンクールで入賞。0度以下で熟成させた完全無添加の純米酒は、香り高くなめらかな上、さまざまな料理に合う。「うちの酒はお刺身も、熱々のチーズフォンデュも合うんです」と加藤さん。なんと、オバマ大統領も愛飲しているというからすごい! 梵を飲んで輝く未来が誕生して欲しいと、欧文表記は「born(生まれる)」。日本酒のおいしさを伝えに、次はリトアニアに遠征出張だそうだ。

眼鏡の素材で女心をつかむ アクセサリー職人

キラキラ輝くキューブやビビッドな色のブレスレット。この可愛いアクセサリーを作っているのは、白髪に白髭と仙人のような風貌の葵多聞(あおいたもん)さん。実はこれ、眼鏡フレームに使われるアセテート生地で作られているもの。鯖江と言えば世界的な眼鏡の産地。材料管理をしてきた葵さんは、同じ素材で別の物ができないかと考えた。まったくの未経験から始めて「年配者は明るい色、若い子はシックな方が好み」などようやく女性に売れるものがわかってきたという。その色合いは眼鏡の素材とは思えないほど美しい。鯖江ならではのお土産にいかが。

木の声に耳を傾け、伝統の技術で 新しいプロダクトを生み出す

越前漆器の木地師(きじし)だった義父の仕事を垣間見て、「神の手だと思った」と話す、市橋人士(ひとし)さん。漆器の骨格を生み出す作業にものづくりの本質を見いだし、3年間師事。継承する伝統技術と、グラフィックデザインを組み合わせたプロダクトを作ろうと、2001年に木製のデザイン雑貨ブランドHacoaをスタートした。転機となったのは木製のキーボードだ。プラスチックのキーボードにアレルギー反応が出るという客からの依頼だったが、当初は不可能と思われた0.数ミリ単位のキーボードの緻密さを木で実現。その美しいデザインは海外でも注目を浴びた。以来、数々のプロダクトを生み出してきたHacoaだが、中でも木製のUSBメモリは大ヒット商品。「Hacoaのモノを選んでいただくのは、触れてみたいという、ものの魅力に尽きる」と市橋さん。木は木目一つとっても異なる表情を持っている。だからこそ木と会話しながら製作していくことが重要なのだという。今日も工房で新しいものづくりが行われている。

世界に一つ、自分だけの越前漆器を プロデュースするデザインユニット

400軒近い越前漆器関係の企業や工房が集まる、鯖江市河和田地区。1つの椀ができあがるまで、素地工程塗り工程、加飾工程と、何人もの職人の手を経る、気の遠くなるような作業だ。atakayaは「今の生活スタイルに合うもの」を前提に、モダンでシックな越前漆器をプロデュースする、デザインユニット。代表の安宅勇二さん(右)は大学を卒業後、越前漆器をホテルや旅館などに売る営業マンだったが、「オリジナリティのあるものづくりがしたい」とブランドを立ち上げた。越前漆器の魅力は漆の仕上がりの美しさ。店に並ぶのは、定番の椀や重箱から、スープカップやボウル、皿など、洋食にも合うものまでさまざま。「職人の手作業ですから、世界に1つしかない自分だけの漆器をつくることが可能なんです」と弟の洋二さん(左)。職人はすべて河和田在住と、地区全体が越前漆器の工房のよう。atakayaの器は、職人たちの伝統的な技とモダンな感性との結晶なのだ。

大学生のアイデアと熱意により鯖江を活性化中!

全国から大学生が集まり、“市長になったつもり”で  鯖江の魅力や課題、活性化プランなどを話し合う「鯖江市地域活性化プランコンテスト」が行われて2012年で5回目。はじまりはある女性の想いからだった。同コンテスト実行委員会コーディネーターの竹部美樹さん(右)だ。東京で働いていたが、「故郷の役に立つことをしたい」と帰郷。自ら市役所や商工会議所、商店街などに企画を持ち込み、運営スタッフに地元の学生を集め、開催にこぎつけた。コンテストでは独創的でユニークなプランが多く生まれ、「めがねギネス」のように実現した企画も。回を重ねるごとに地元の学生たちの意識が大きく変わってきたという。「自分たちが主体的に活動する楽しさを学生に知って欲しい」と竹部さん。昨年9月にはNPO法人を設立し、IT会社jig.jp代表の福野泰介(たいすけ)さん(左)を理事として迎え、さらなる若者支援のプロジェクトを計画中。「竹部さんは、若者をまきこんでまちづくりを企てる同志、って感じですね(笑)」と福野さん。今後、どんな“大学生市長”が登場するのか楽しみだ。

眼鏡大好き、福井人

福井を代表する産業と言えば「眼鏡フレーム」。国産シェア97%を誇ります。福井人には、必ずと言っていいほど眼鏡関連の仕事をしている友人や親戚がいるのです。購入したり、眼鏡づくりを体験したり、眼鏡女子・男子と交流したり、ふくいの眼鏡をお楽しみください。