眼鏡の魅力を世に広める 鯖江きってのアイウェアマニア

鯖江は眼鏡産業で有名だが、実は小売店は数店。そのなかで唯一無二のセレクトで異彩を放っているのが田中眼鏡だ。「自分が思う、眼鏡の美しさ、個性をこの店で表現したい」と代表の田中幹也(みきや)さん。店内にはこだわりのフレームがズラリ。例えば「歩(AYUMI)」というブランドのフレームはかけたときの装着感がふわっと軽い。「細部まで手仕事で磨いている。それが職人ワザなんです」。家業を継ぐ前は眼鏡職人の下で働いた経験もあり、「眼鏡を見ただけでどの工場で作っているかわかる」ほど眼鏡オタク。田中さんの手にかかれば、きっとお気に入りが見つかるはずだ。

古きを愛し新しいモノを生み出す めがねデザイナー

鯖江でひときわ異色の経歴を持つ新進気鋭のめがねデザイナー、山岸誉(ほまれ)さん(左)。大学で民俗学に出会い大学院に進学。修了後、一転福井に戻りデザインの道を歩み始める。「自分のブランドを」との思いから自社ハウスブランドを立ち上げ、今や多くの著名人が愛用するまでに成長した。ここから目指す舞台は世界だ。趣味では能楽を嗜(たしな)み、堂々と謡(うた)い、舞う。「能も舞と謡とのかけ合いが大切で、めがねのデザインもチームワークが必要」。古きを愛することが、新しいモノを生み出す原動力になっている。デザインと伝統の継承、その両方を追い続ける。

「池田町の風土を表現したい」 憩いの市場を目指し奮闘中

2012年にオープンした「まちの市場こってコテいけだ」は池田町の特産品が並ぶセレクトショップ。町全体の取り組みでもある、農薬をできるだけ使わない「ゆうき・げんき正直農業」の新鮮な野菜や、池田のおいしい水で作ったオリジナル商品「いけソーダ」なども購入でき、地元食材をつかったお惣菜も食べられる。「単にものを売るだけではなく、商品を通して池田町の風土を見せていきたい」と店長の宇野嘉秀(よしひで)さん(中央)。何か新しいことが起こりそうな池田町の勢いに惹かれて、福井市の情報システム会社から一昨年転職した。「町内外みんなが集える店に成長していって欲しいです」。

地域とのつながりを大切にし 安心安全な米や野菜を食卓に

大阪で長年、喫茶店のマスターだった長尾伸二さん。長男がアトピー性皮膚炎になったことがきっかけで、安心安全な米や野菜を作りたいと、1995年に池田町に移り住んだ。農業に関してはまったくの素人。町内の農家で夫婦共々修行を重ねた。「大変だったけど、手塩にかけた米や野菜は最高においしい」と妻の真樹さん。町では必要なものは物々交換する習性が残っており、それがありがたいと話す。「地域の人とのつながりが大切」と伸二さん。今では環境ネットワーク事業の中心人物として、頼りにされる存在だ。「世界一うまいんとちゃうか」と言う、アスパラガスを食べてみたい。

幸せの青い鳥はここにいた! 農業をつうじて仲間をひろげる

農業を通して町と農村の交流を深めようと、1996年に設立したファームハウス・コムニタ。前身は農協青年部の地域活動。創立メンバーの沢崎美加子さん(右から2番目)は1989年に故郷の池田町に戻り、地元の人たちのがんばっている姿を見て、「“幸せの青い鳥”は外ではなく、ここにいた!」と思ったという。「農業で人をつなげたい。最初は試行錯誤の連続でした」。田んぼのあぜぬりなどの体験メニューは本格的すぎて人が集まらなかったという苦労も。農業、食、レジャーと体験メニューを増やすことで参加者が増加。人気はピザづくり体験だ。穫れたての野菜のおいしさに子どもたちはびっくり!

環境問題に真っ向から挑む チェンソーアーティスト

「林業が地球を救う!」と豪語するのは、アーティスト長谷川浩さんだ。20年前、ドイツへまちづくりの視察旅行に行き、環境への意識の高さに驚愕した。大好きな池田町でずっと暮らしていくために何ができるか?ここには豊かな森林、木材がある。木があれば食器や家具、家まで作れ、廃材は薪となって無駄が無い。「森や木は生命の象徴」。今、長谷川さんは林業に携わり、チェンソーを持って林地残材から作品を創り、世界にメッセージを発信する。ドラム缶の薪ストーブを開発し、「エネルギーの地産地消」をうたう。今夜も囲炉裏(いろり)を囲み、仲間たちと池田町の未来を熱く語る。

能面のコレクションは圧巻。 心のこもった朝食に感動

石畳の続く寺町通り近くの風情ある老舗旅館。かつては料亭を営んでいたとあって、料理がおいしいと評判の宿だ。朝市の新鮮な野菜を使った、おひたしや里芋の煮物などが並ぶ朝食は、ほっこり滋味深くカラダに染み渡るおいしさだ。「まるで親戚のように、長年通ってくださっているお客様もいらっしゃいます」と女将の酒井洋子(ひろこ)さん。客間に飾ってある能面は、酒井さんが昔、趣味で作っていたもの。「素人ですから…」と謙遜するも、緻密に彫り上げた翁(おきな)や女系(じょけい)面を見ると素人芸でないのは一目瞭然。その細かやさが、丁寧に味付けされた一品一品の料理にも表れている。

ふくいのおいしい水

米、酒、そば、里芋、水ようかん。福井を代表する味覚に共通しているのが、「水」の美味しさが決め手であること。「ふくいのおいしい水」として県か認定した湧水は47 カ所。水道の水源の約7割が地下水のため、家庭や宿の水道水でも美味しさがわかります。

「イトヨが暮らせる町」を目指して 大野の水の重要性を説く

広大な森林と山に囲まれた盆地からなりたち、豪雪地帯である大野。そのことが良質の地下水を育んでいるといわれる。きれいな冷たい湧き水にしか生息できない魚イトヨの保護学習施設が「本願清水イトヨの里」だ。「大野は水が命。イトヨは美しい水を維持するバロメーターなんです」と長谷川幸治(ゆきはる)副館長。長谷川さんは大手OA機器メーカーの技術者だったが、人のためになる実感のある仕事をしたいと2001年に転職した。学習にきた子どもたちが、その後イトヨを大切にしているのがうれしい、と長谷川さん。館内には卵を守るイトヨの雄の姿を観察するコーナーもあり、癒される。